昨年のHINOTORIツアーからほとんど間を置かずに発表されたB’zのNEW ALBUM「NEW LOVE」。今回は、このアルバムのレビューを書いていく。
1.マイニューラブ ☆☆☆☆
ツェッペリンぽいという声もあるように70年代のハードロックを感じさせる曲。過去の曲では多少「声明」に近い。1度聴いただけではサビが弱く、これまでのアルバム1曲目を考えると「イマイチかな」と思ったが、繰り返して聴くことで耳に馴染んできた。歌詞も新しい恋を探しに行く内容となっており、わくわくした気分になれる。
2.兵、走る ☆☆☆☆☆
タイアップ付きで、ロック調のB’zらしい曲とあってこのアルバムの事実上のリード曲か。REDを進化させた形。この曲のみ、これまでのバリー、シェーンのタッグだが、非常に力強くて聴きやすい。これまでのB’zに一番近い曲であり、サビのメロディが秀逸。さらに、歌詞においてもラグビーを連想させながら多くの物事に当てはまる内容となっているため、感情移入しやすい。ただ、最後のサビ後にライブを意識して、「ヘイヘイヘイホ~」を重ねているがそこはいらなかったか。
3.WOLF ☆☆
サビがキャッチ―で馴染みやすいが、ホーンを多用しており、私はあまり好きではない。このアルバムで唯一飛ばす曲。過去の曲でいうと、少し「ねがい」に近い。「俺は荒野」という歌詞は意味が分からない笑。
4.デウス ☆☆☆☆☆
WOLFから間を置かずこの曲に入るため、最初WOLFのアウトロウかと思った。CMで流れる爽やかなサビとは裏腹に全体的にハードな曲。「DIVE」+「さよなら傷だらけの日々よ」といったところか。ハードな演奏に、爽やかサビの畳みかけがたまらない。ブライアンのドラムの良さも際立つ。
5.マジェスティック ☆☆☆☆
このアルバム唯一のバラードだが、浮かない。それはこのアルバムにあったロック、ブルーステイストを感じさせるからか。タイトルは稲葉氏の造語で、「降ってきた」という。ストーリーがうまく組み立てられており、曲の世界に入っていける。
6.MR.ARMOUR ☆☆☆
「HINOTORI」と同じ時期につくった曲。曲自体はHINOTORIと一線を画した、のりの良いハードロック。ここから、このアルバムの真骨頂を感じさせる曲たちが並ぶ。
7.Da La Da Da ☆☆☆
こちらもツェッペリンを思わせる楽曲。間奏で、ツェッペリンのカシミール風なパートもある。タイトルは歌詞にも入っている。
8.恋鴉 ☆☆☆
ブルース調のロックナンバー。サビでは恋の「滓(かす)」と歌う。「かす」という、マイナスイメージの言葉がサビにあり、当初は違和感があった。だが、繰り返し聞いているとこの曲のサビが頭から離れなくなる。それはメロディもそうだが、歌詞の言葉のチョイスによるところが大きいのではないか。
9.Rain&Dream ☆☆☆
エアロスミスのジョー・ペリー参加の曲。TAKのギターから、ジョーのギターかは音色が全くことなるため、一度聞けばすぐ分かる。6分超にも及ぶブルージーな曲だが、自然体の演奏と歌い方を感じられる。過去の「雨だれぶるーす」のような堅苦しく、「大量破壊兵器」など社会問題を内包し、理想を追求する内容の歌詞ではなく、ありのままをやりたいように表現したと思わせる楽曲。
10.俺よカルマを生きろ ☆☆☆☆
ハードロックと、TAK得意のサビメロがうまくマッチしている。加えて、歌詞も「カルマ」という地獄のような厳しい状況に置かれても前を向く様子が描かれており、耳に馴染みやすいサビとマッチしている。このアルバムの後半パートで一番好きな楽曲。
11.ゴールデンルーキー ☆☆
タイトルだけみて期待していた曲だが少し期待外れか。ただ、ハードロックに変わりはなく、アルバム全体の中でも前の曲と次の曲をつなぐ。
12.SICK ☆☆☆
アルバムを聴く前に、他の評論家の評判が一番よさげだったため、変に期待してしまった。「サビ」が頭から離れないとのことだったので、「HEAT」のような軽いロックを想像していたがいい意味で裏切られた。確かにサビは強いが、それ以外のパートも決して劣るわけではない。そこまでギターが強いわけではないが、バッキングもきちんと入っており、やはりHRを感じられる曲。
13.トワニワカク ☆☆☆☆
漢字にすると、「永遠に若く」か。当初、稲葉氏の造語かと考えたが、単純な日本語だった。「Man of the Match」に近く、「トワニワカク」というフレーズを刷り込んでいくようなパートがある。サビの間に挟まれるギターがたまらない。歌詞自体は、加齢による衰えに抗いたいといった内容だが、加齢に限らず、厳しい状況に置かれても「アキラメナイ」を脳に刷り込んでくれる。
【総評】
NEW LOVE ☆☆☆☆☆
(ACTION<NEWLOVE<CIRCLE<DINOSAUR<MAGIC)
今作は過去にない、明るいハードロックアルバムだ。ELEVEのハードさを7th Bluesで中和したような感じか。TAK自身も「7thのころより、うまくできた」と語っている。さらに、彼の一番好きなアルバムが「ELEVEN」とあって、ELEVENにキャッチ―さを付加すれば、完成度が高いアルバムなったことは想像に難くない。
ただ、一周聴いた限りは、既存発表曲を除いた過去数作における「CHAMP」や「Black Coffee」「C’mon」のようなキャッチ―な曲がなく、その上、後半は同じような曲ばかりという印象だった。それが繰り返し聞いていくことで、その度ごとに演奏面、歌唱に新しい発見がある。そのため、これから非常に長く聴けるアルバムになりそうだ。
前作、DINOSAURでさらなる進化を見せたB’z。DINOSAURは、タイトルトラックやCHAMP、シングルといった非常に強力な曲が詰め込まれている一方で、「それでもやっぱり」「愛しき幽霊」「SKYROCKET」といった閑話休題的な曲たちも配置されている。それが今作には皆無だ。本人たちもアルバムの中でのバランスは重視しているだろうが、ここ何作かにあったそういった楽曲を排してまで、今やりたいハードロックを自然体で好きなように突き詰めた結果が今作なのでないか。歌唱においても、去年の不調もあってか肩ひじはらず、楽曲より出過ぎない、無理のない歌い方をしているように思える。
今や米国ではロックは流行っておらず、ヒットチャートの上位に上ることもない。だが、日本では31年経ったB‘zがゴリゴリのハードロックアルバムで、週間1位を獲得し、多くの人がHRを聴いている。それは彼らが進化続けてきたからなのだろう。
そういった意味では、EPIC DAYから、NEW LOVEをつなぐ、DINOSAURの存在は非常に大きい。B’zはDINOSAURで、曲間の間を楽しむ進化を遂げなければ、NEW LOVEでの音圧と、あるがままのHRは生まれなかったのではないか。そういった思いを巡らせると、早くて2年後になるであろう、次のアルバムでのB‘zの進化を楽しみに待たずにはいられない。