ヒノトリの有頂天ブログ

B'zを中心に、たまにプロ野球、倉木麻衣についてつづります♪

【B'z】ぐっとくる歌詞10選 考察付。新曲STARSについても解説!

 B'zの稲葉さんの歌詞&歌詞に関するインタビューをまとめた書籍「シアン 特装版」がこの程、発売になりました。そこで、インタビューではこれまで語られてこなかった歌詞制作の秘話や歌詞の意図を本人が解説。今回は、稲葉さんの人間性と作詞家としての能力を発揮したB’zの歌詞から筆者が特に好きな10曲を選びました。曲中で、琴線に触れるフレーズとともに書いていますので、気になった曲をぜひ聞いてみてください。

 

1.いつかのメリークリスマス

 「僕は走り閉店まぎわ 君のほしがった椅子を買った」

 有名なこの歌詞は稲葉さん自身の実話であることが明らかになりました。なかなか妄想では生み出せない歌詞だと思っていましたが、実話と分かったことで妙にリアル感が出てきます。推察するに、稲葉さんが大学生の頃かと思われます。この曲は92年発表ですから、だいぶ遡って書いたことになります。

 この曲の歌詞がいいのは、ほぼ情景描写でつながれていくこと。曲の最後も、主人公は通り過ぎていく幸せそうな誰かを眺めているといます。その中に、サビは当時の思いが入っています。ハッピーなクリスマスの歌ではないですが、あの時の思い出としての「いつかのメリークリスマス」で、暗過ぎず明過ぎない具合がいいです。

 稲葉さんのパーソナルな部分を入れ込んだ歌ながら、多くの人に、かつてあった幸せなクリスマスを表現できているからこそ、これだけ長く愛されている曲なのだと思います。

 

2.光芒

「光を求め歩き続ける 君の情熱がいつの日か 誰かにとっての光となるでしょう」

 最後の大サビの歌詞です。ひたすらにもがいて頑張ってもそれが報われるか分からない。でもそれがいつしか誰かが見ていて届くかもしれない。

 一般の人の多くの物事はそうなのではないでしょうか。いくら頑張っても、明確に意味付けできることはそう多くはないはず。大スターの稲葉さんでさえも調子の悪かった2018年のPleasureツアーでこの曲を歌っていると「自分自身、励まされた」と語っていますが、曲全体は暗いです(笑)。人生に絶望していく主人公が描かれてますが、曲の終盤で一筋の光が差し込んできます。その一筋の光=光芒を歌詞化したのが、ラストの大サビ。筆者は何度この曲に励まされたか、枚挙にいとまがありません。

 この曲の歌詞には一言も「光芒」という言葉は出てきませんし、言葉自体、一般の人には馴染みのない言葉でしょう。けれでも、曲の展開とラストの大サビの歌詞が合わさった時、「光芒」の言葉の意味が分かるような気がします。その言葉を歌詞中に出さなくても、曲を多くの人に納得感のある形で成立させるという点でも、この曲の歌詞は琴線に触れるものだと思います。

 

3.パーフェクトライフ

「何か向かい 手をのばし もがいてる その姿 それこそがパーフェクトなライフ」

 この歌詞は2番終わってからの間奏部分です。どんなに完璧に見える人だって、すべて完璧な人はいないという前提から、この歌詞につながっています。その中で、そうやってもがいている姿が完璧なんだと、逆説的に表しています。

 この曲は完璧に見えている人間側の歌ではなく、大多数の自分に何らかの欠点があると思っている人間の視点で描かれています。欠点を補おうともがいてるからこそ、平凡な人生が「パーフェクトライフ」になる。それによって人は鼓舞され、自分の信じた道でもっと頑張れるし、「虹の彼方」まで行ける。そんな好循環を生み出してくれるからこそ、筆者はこの歌詞が好きなんです。

 

4.RUN

「人間だって誰だって とても普通で 出会いはどれだって 特別だろう」 

 この歌詞は2番終わりの間奏部分です。「とにかく立ち止まらず走り続ければ辿りつける場所がある」。20周年ライブで稲葉さんがこの曲のはじまる前に述べたセリフがこの曲を総括しています。               そして、その過程で人は必ず誰かに出会います。もしくは既に出会っています。出会いはどんな人でも平等で、出会う人がどんな人で良くも悪くも、自分に何かを与えてくれる。それを「特別」と表現しています。

 この曲は1992年発表ですから、デビュー5年でここまでの境地に辿り着けたことも特筆すべきポイントです。今でもPleasureライブでは欠かせない曲。ライブでのメンバーとファンとの出会いを歌ったフレーズでもあると思えるからこそ、心にぐっとくるものがあります。

 

5.ARIGATO

「君が泣いてたこと知ってるけど それを君だって知ってたんだろう」

 2番のサビ前の歌詞です。この歌詞を読むと、「うん?」と少し考えてしまいます。が、要するに、「君が泣いていたことを僕は知ってるけど 僕が知ってことを君も知っていただろう」ということ。曲に載せて歌詞を書く中で、分かりやすいように簡略化してるというような趣旨の発言もあり、聴いていて「うん??」という表現は少ない稲葉さん。その中にあって、この曲はシングル表題曲かつアテネ五輪のテーマソングでした。それでいて直接的な応援ソングではない、この曲を出したものだから、当時は周囲から「不評の気配があった」と稲葉さんと語っています。

 けれども、歌詞全体を見渡すと、意味深いものに仕立てています。この曲の元の題名は「そこに誰もいなくても」。その先に誰もいなくても扉を開けてみようという、メッセージが込められています。その勝負に出る前に、過去を振り返り「ARIGATO」の感謝を噛み締めて、未来に向かう展開になっています。過去を「ARIGATO」、未来を「そこに誰もいなくても」の言葉で対比させているのでは?と考えています。翻って、その対比の中間にある現在に、「一歩を踏み出す」ことが大切だと示しています。

 最終的にはタイトルに「ARIGATO」をとり、「感謝を忘れずに、今、一歩を踏み出せは、新しい世界に辿り着ける」。過去、現在、未来をつなげる時空を超えたスケール感のある曲だと思います。

 

6.夢見が丘 

「本当に優しくなれるのは 色褪せた景色を見てる時」 

 1995年発表のこの曲は今回の著書にて、阪神淡路大震災を受けてつくった曲だと明かされています。この歌詞はそれを端的に表した部分と言えると思います。震災によって「色褪せた景色」を見て人々がどう思い、どう行動するのか。この一節は人の心理をついた秀逸性を感じます。

 全体の物語は主人公が人の喜びや悲しみ、善悪など葛藤を抱えながら、夢を見つづける丘、「夢見が丘」に立っているとうもの。歌詞の壮大さも惹き込まれるポイントとなっています。

 人は出逢いと別れを繰り返し、必ず死ぬゆくもの。その死を歌詞中では「土に埋もれ」と表現し、人は死に土に還ってゆくという死生観が描かれています。だからこそ、曲のラストのサビでは、今をいる自分と君で、夢を見続けようというメッセージが込められているのではないのでしょうか。

 

7.C‘mon 

「手をとり かけぬけた 思い出が 今も燃えているなら 僕らは負けないだろう」

 2011年の東日本大震災を受けて書かれたこの曲。「C'mon=一緒に」が歌詞のキーワードになっています。この震災は津波で多くの人が亡くなり故郷が壊滅し、原発事故で多くの人が故郷を奪われた災害です。歌詞全体がこれらすべての人を救ってくれる内容となっています。その原動力こそが、それぞれの人の中にある「記憶=思い出」。それを思い出すとつらいから思い出すまいとする人もいる中で、その思い出を呼び覚まし、思い続けることで、生きる糧にしていくというのがこの歌詞です。

て そして、「僕ら」という3人称は生き残った僕と君、その他の人に含みをもたせています。この「ら」にはB'zのメンバーも含まれていると思います。直接的に表現せず、「僕ら」と言ってそっと背中を押してくれるところが、押し付けがましくないこの曲の素晴らしさであり、稲葉さんの人間性が滲み出ています。悲しんでいる人、打ちひしがれている人に「そっと寄り添ってくれる」歌詞であるからこそ、この曲は筆者がB'zで最も好きな曲の一つです。

 

8.MY LONELY TOWN

「誰かとわずかに 共鳴できること 何とか見つけ出して かろうじて繋がる」

 2番終わりの間奏部分の詞です。この曲の歌詞は今回、東京の酒場をモチーフに書かれたことが明かされています。様々な場所に様々なアイデンティティをもつ人たちが集まる場で、その人たちが盛り上がる共通の話題=共鳴があります。その共鳴によって、人々はなんとかつながっているという真理です。

 この曲にはストーリーがあって、明かりの下に集まって語り合う→その中で人の感情の機微を感じる→そんな脆い人間関係に心がさまよう→自分と気が合う、もう一人の自分を探しに旅に出る→でもまた明かりの下に戻ってきてしまう。その繰り返しの中で、いつの日か、もう一人の自分に会える「素晴らしい事件」に辿り着く。といぅもの。田舎出身の筆者は都会でこの歌詞に共鳴する経験をたくさんしてきました。その分だけこの曲の歌詞にぐっとくるのかもしれません。曲のタイトル「LONELY TOWN=一人ぼっちの街」だけど、「MY」が入ることで、その街への愛着が伝ってきます。この曲は故郷を離れて暮らす人たちの共鳴ソングなのだと思います。

 

9.Calling

「必要とし 必要とされていること それがすべて 他には何もない」

 2番のサビ前の歌詞です。この曲にはラブソングとしては直接的な歌詞はないです。そのため、恋愛だけでなく友情ともとれる、人と人との絆が描かれているのが良いところ。相思相愛の関係でこそ、強い絆が成立し、その先に、ホントの自分を見せることができる鮮やかな輝く瞬間があり、「誰にも真似できない同じ夢」をみることできると歌っています。離れていても相思相愛であればつながっていられるという、思いの強さが人と人とを引き寄せ合うことが歌詞全体で表現されています。

 この曲はロック調の部分→バラード部分→ロック調の部分の構成。ロック調の部分で相手に向かって呼び掛け、バラード部分で相手と自分との関係性や思いを語っています。

 

10.STARS

「荒ぶる風にまた吹かれよう」

 この歌詞は2023のPleasureツアーのために制作された新曲のサビ終わり部分。この歌詞には35周年を迎えてもなお、あくなき挑戦を続けるB’zの姿勢と、これまで幾度となく雨・風に打たれてきたライブの思い出、幾多の困難を乗り越えてきたB'zとファンの絆が凝縮されていると思います。歌詞全体は、「これまで作ってきた楽曲、デビューから応援してくれているファンの皆さん、そして、B’zとしてさらに、どこか目指して進んでいくその先にあるもの このかけがえない存在すべてがSTARS」 と稲葉さん。35周年後もまだ「挑戦」を標榜していることがこの曲の核であり、B'zの凄さ。B'zはこの先、ファンやまだ見ぬ人たちにどんな地平を見せてくれるのでしょうか。楽しみで仕方ありません。

 

いかがでしたでしょうか?スターになった今でも苦しむ人の心に寄り添い続ける歌詞を書く稲葉さん。今後の作品も楽しみです。

 

なお、「シアン 特装版」は受注生産のため、新品はもう手に入りませんが、シングル曲の歌詞とインタビューをまとめたバージョンは一般書店、ネット書店で販売中です。

ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。