遅くなりしたが、本記事では2021年12月8日に発売されたB’zのコンセプトアルバム「FRIENDSⅢ」の感想と、それに伴って開催された有観客ライブ「B’z presents LIVE FRIENDS」について書きます。
「FRIENDSⅢ」は1992年に発表されたB’z初のコンセプト・アルバム「FRIENDS」、1996年リリースの「FRIENDSⅡ』から数えて25年ぶりのリリース。松本さんがコロナ禍で米国と日本を往来する中、入国時の2週間の待機期間期間中、オリジナルアルバム用に「1日1曲書く」と決めて楽曲を制作。制作していくうちに、「FRIENDS」ぽい曲が多くなったことから、本作の制作を稲葉さんに提案しました。稲葉さんはその提案に乗り、本作としてリリースすることにしたといいます。
「冬」をテーマにした「FRIENDS」シリーズは、これまでのシリーズを通してテーマとなっている映画のサウンドトラックのような全体感を保ちつつ、近年のオリジナルアルバムにはあまりみられない華やかなブラスセッションや美しい音色のストリングスなど、多彩な楽器でアレンジを施しています。全体的にメロウで温かみのある曲が多く、曲にもストーリー性があります。感想は下記です。なお、このアルバムにはタイアップ曲はありません。
1.harunohi
インストロメンタル曲。
2.シーズンエンド
オススメ度:☆☆☆
プロモーション時における本作の一押し曲。メロウなAORでゆったりとした明るい曲。ゆっくり落ち着いて聴きたい曲です。歌詞は失恋ソングながら、「憧れに体を熱らせてみたり」の明るい歌詞が印象的。近年のB‘zにはないタイプの曲で新鮮です。ただ、過去の「FRIENDS」シリーズで核となっている「いつかのメリークリスマス」、「傷心」などと比べると役不足感は否めないのは確かです。
3.ミダレチル
オススメ度:☆
明るく跳ねた曲。通常のオリジナルアルバムの中盤にありそうな曲です。明るさとは裏腹に、歌詞は失恋を歌っています。
4.Friends Ⅲ
インストロメンタル曲。
5.Butterfly
オススメ度:☆
アコギで静かな楽曲。嫉妬をモチーフにしたラブソングです。「世界中旅できたし でも今はどこでもいい あなたといっしょなら」の歌詞がコロナ禍を連想させます。
6.こんな時だけあなたが恋しい
オススメ度:☆☆☆☆
こちらも明るく跳ねた曲で、通常のオリジナルアルバムにありそうですが、筆者の本作一押し曲です。メロディーラインがいつもB‘zで、聞く人に安心感を与えてくれます。タイトルの通り、ラブソングですが、何とも言えない恋愛感情を歌っています。「転がるボルトは心のデザイン」の歌詞が秀逸です。
7.GROW&GLOW
オススメ度:☆☆☆
サビが印象的なメロウでゆったりとした曲。筆者としてはこの曲が本作ならではかつ本作を象徴する作品だと思っております。「Everyday we can glow&glow」のサビのメロディが印象的です。歌詞にこれといってクリスマスや冬を感じさせるフレーズが少ないにも関わらず、クリスマスや冬感のある温かみのあるアレンジとしてくれています。歌詞は二人の関係性を「無我夢中に時間を積み重ね」と表現。時間の積み重ねで成長していく2人の人間関係を描いています。歌詞のラストも「真っ白いこの道を」と締めくくられており、2人の明るい未来に向けて本作が終了しています。
【初回限定盤DVD収録】
いつかのメリークリスマス
~FRIENDS Ⅲ edit~
「いつかのメリークリスマス」をリ・レコーディングした音源を用いたMUSIC VIDEO。オリジナルはアコースティックギターのみでしたが、本作ではエレキギターを使用。オリジナルよりライブ感のあるアレンジになっています。ボーカルも歌い直されています。稲葉さんはこの曲について、「この曲を歌うのが苦手だった。ようやく昔より上手く表現できるようになってきた」といった趣旨をインタビューで答えています。深みを増した稲葉さんのボーカルを楽しむことができることもこの新しい「いつかのメリークリスマス」の魅力です。
<総評>
本作のオススメ度:☆☆☆
近年なかったテイストの曲、B‘zには珍しいテイストの曲が多く新鮮です。B’zと言えば「ロック」といったイメージを打ち破る仕上がりで、落ち着いて聴けるアルバムです。ただ、過去作に比べるとインパクトのある曲はなく、その点で評価は高くないものとしています。
そして、あるアルバム発売前の2021年11月16日、17日に、東京ガーデンシアター(東京。有明)有観客ライブ「B’z presents LIVE FRIENDS」が行われました。このライブは配信もされました。セットリストは下記です。
※配信は、2021年12月24日~2022年1月4日
※画像出所 B'z公式サイト
【セットリスト】
1.いつかのメリークリスマス (Reprise)
2.僕の罪
3.Love is...
4.恋じゃなくなる日
5.傷心
6.BABY MOON
7.ある密かな恋
8.sasanqua 〜冬の陽
9.SNOW
10.きみをつれて
11.Friends
12.シーズンエンド
13.Butterfly
14.こんな時だけあなたが恋しい
15.ミダレチル
16.GROW&GLOW
17.どうしても君を失いたくない
18.SEASONS
19.いつかのメリークリスマス
〈アンコール〉
20.結晶
21.JOY
22.TONIGHT(Is The Night)
ほとんどの曲が未演奏もしくはかなり久々という新鮮味溢れるライブでした。特にアンコールの内容が素晴らしかったです。個人的に冬の装いの「結晶」(「衝動」のカップリング曲)は演奏を待望しておりましたので、嬉しさも一塩でした。そして「JOY」(「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」のカップリング曲)。今までそこまで深く聴いたことのない曲でしたが、このライブでハマりました。「こんなに良い曲がまだあったのか」。これが正直な感想です。当初は「結晶」と「JOY」両方練習し、どちらかを本番で演奏するつもりだったといいますが、「練習して両曲とも良かったので演奏することにした」といいます。これも2020年配信ライブを経たフレキシビリティの賜物なのかもしれません。
ライブ本編についても、「恋じゃなくなる日」や「傷心」、「きみをつれて」など、ファンがライブでの演奏待ち望んでいた曲たちが演奏されました。中でも「恋じゃなくなる日」が格別。半音下げで演奏されたことで、かっこよさが際立っていました。
「FRINDSⅢ」のリリースはこのライブとセットありきでした。本作がリリースされた最大のメリットはこのライブにあります。現在、配信期間は終了してしまいましたので、このライブを視聴するには今後の映像化を期待するほかありません。