デビュー20周年YEARの倉木麻衣。20周年YEAR記念オリジナル・アルバム『Let's GOAL!~薔薇色の人生~』が8月14日発売された。本記事ではそのレビューを書いていく。
- Let's Go! ☆☆☆☆
タイトルからするに、底抜けに明るい人生応援ソングを予想していたが、曲の雰囲気はそこまで明るくないため、いい意味で裏切られた。これまでのアルバム1曲目、FUTURE KISS、touch Me!などに比べると弱いものの、アルバム全体への期待感を覗かせる、流れるようなメロディの楽曲。一聴するとイマイチに感じるが、曲にしつこさがないため、繰り返し聴きたくなり、ハマってくる。
- きみと恋のままで終われない いつも夢のままじゃいられない ☆☆☆
シングル曲で、アニメ「名探偵コナン」主題歌。渡月橋のヒットを受けてつくられた楽曲。歌詞には、京都を感じられるよう「清水寺」や季節の移ろいを感じさせるフレーズが散りばめられている。だが、狙い過ぎた感があり不発。歌詞、メロディともに足りない印象で、吐月橋のヒットには遠く及ばなかった。
- Long distance ☆☆☆☆
ここからこのアルバムの真骨頂を発揮する。ホーン、ピアノ、ギターが入り交じり、しゃれた雰囲気を醸し出し、心地よいノリの曲。
- Missing You ☆☆☆☆
このアルバムで3番目に好きな曲で、ラブソング。サビの「果てしない空に望むものがあるとすれば」のメロディに透き通る声がマッチし、聴く者に極上の癒しを与えてくれる。
- Wishing on a.. ☆☆☆
インタビューで、地球環境をモチーフにつくったと言っていたため、DIAMOND WAVEのようなPOPな楽曲が想定していたが、この曲はPOPとは真反対で静か。歌詞は波、潮風、砂浜など海を中心に、美しい地球環境に対して、静かに歌いかける内容。歌詞、曲調ともにDIAMOND WAVEのような陳腐さはなく、地球環境啓発系の曲にありがちな押し付けがましさがないため、自然と耳に入ってくる。
- I will ☆☆☆
ラブソングだが、別れの歌。静かな曲で、「あなたのために歌うよ。ひたすらに」と、あなたに問いかける楽曲。そして、最後には感謝を述べ、ピアノで曲が閉じる。5、6は静寂が相応しい深夜など1人静かに聴きたい。
- Can't stop my feeling ☆☆☆☆☆ このアルバムで2番目に好きな曲で、R&Bベースの楽曲。サビが心地よく、自然とノリノリになれる。初期の頃のような楽曲だが、現在の倉木のノリと歌唱力で見事に昇華している。
- Body talkin’ ☆☆☆☆
こちらもR&Bベースの楽曲。こちらも初期にありそうな楽曲だが、これまでの曲にもないビートとメロディラインで新鮮。歌詞は、付き合っていて愛しているが、体を重ねるような一歩先の関係にいきたいという、初期の彼女では歌えなかった大人な楽曲。
- Change ☆☆☆☆☆
このアルバムで1番好きな曲で、こちらもR&Bベースの曲。倉木得意の人生応援ソングでかつ、歌詞も「いつでもなりなおせる」「なせばなる」「なんだかな」といった陳腐になりがちな歌詞を多用。さらに、サビを筆頭に「チェチェチェンジ」と言葉の頭を重ねる手法を多用しており、陳腐さがより一層増し兼ねなかった。
だが、曲調、メロディ、歌唱でこれらの陳腐さをカバーするばかりか、この歌詞であるからこそ背中を押してくれるところまでもっていっている。制作では、曲ありきで、歌詞を嵌めたのだろうが、あえてストレートな言葉をもってきて曲のタイトルである「Change」に説得力を与えたのだろう。
- JUMP! JUMP! ☆
得意の人生応援ソングで、THE J-POPな曲。ここまでR&B楽曲を中心とした良い流れで来ていた流れを、悪い意味でぶっ壊す曲。このアルバムには必要ない上、メロディ、歌詞ともに楽曲の完成度が低く、リリースすることをためらうレベル。だが、アルバム曲でライトなノリの曲はこの曲しかなく、ライブでは重要な位置でやりそう。
- 薔薇色の人生 ☆☆☆☆
シングルで、アニメ「名探偵コナン」主題歌。20周年を記念した人生応援ソングのため、過去のコナン主題歌のタイトル「Start in my life」「一秒ごとにLove for you」「Time after time」「PUZZLE」「Glowing of my heart」を歌詞に入れ込んでいる。サビ後半の「ここに生まれた意味をつくりだして」という歌詞に強い意志を感じられ、胸をうたれる。全体的にPOPで、ライブで非常に盛り上がりそうな曲。最近では、ライブ後半で盛り上がるJ-POP調の曲はSAWAGE☆LIFEがあるが、今後とって代わりそう。ファンにも人気が出そうでライブには欠かせない曲として、多用しそうだ。
- 幸せの扉 ☆☆☆
サビの耳馴染みの良い、明るい曲。サビ以外のメロディが微妙なのが残念なところ。ハウスメーカーの「クレバリーホーム」のCMソングとあって、「雨にも負けず」「笑顔溢れる」など、「家があるいいな」と思わせる歌詞。
BONUS TRACK:負けないで
ZARDの名曲をカバー。自分のものにしている感はなく、原曲をなぞっている感じ。倉木のファン、ZARDのファンともにそこまで望んでいない収録であるため、売り上げに貢献したとも思えない。であるなら、Let it be、Cry me a riverなど、得意の洋楽カバーを収録した方が、私をはじめ倉木のファンは喜んだはずだ。
【総評】☆☆☆☆☆
リリースから日が浅いため、正当な評価はできないが、これまでで一番良いアルバムだと思う。特に、3~9曲目について完成度が高い。これらの曲は、特別ライブで盛り上がるような曲ではないかもしれないが、20代のころのベストオブヒーローや一秒ごとにLove for youのようなJ-POP調ではなく、R&Bをベースにしているため、曲に雰囲気があり、聴きごたえがある。円熟した今の倉木だからこそできたアルバムなのだと思う。
初期に強かったR&Bに原点回帰を図りつつも、単に原点に回帰するだけでなく、現在の倉木にFITするよう曲のアレンジ、メロディを進化させている。その大きな要因と言えるのが新しい多様な作曲家の起用だろう。初期に多かった大野愛果氏の楽曲はなく、レディー・ガガに関わった作曲家(8曲目)を含む、幅広い作曲家、アレンジャーの楽曲を並べている。倉木本人もアルバム全体のバランスを考える上で、曲の選定に試行錯誤を重ねたとしている。その試行錯誤が功を奏し、これまでになかった曲調、アレンジの楽曲が多く、新鮮さを与えてくれる。倉木麻衣のNEWアルバム『Let's GOAL!~薔薇色の人生~』は、ダサさ満載のタイトルとは裏腹に、デビュー20年にして辿り着いた一つの境地なのではないだろうか。